インプラントトラブルに関して

インプラントについて批判的な報道が相次いでいます。国民生活センターからの「歯科インプラント治療に係る問題」の発表以来、新聞、テレビ、週刊誌までインプラントに関する負の話題が盛んに報道されています。NHKクローズアップ現代「歯科インプラント トラブル急増の理由」がその代表であり、歯科医師過剰→経済的問題の発現→インプラント治療へ→知識・技術不足(歯科医師のモラル低下)→インプラント トラブル多発と言う流れを強調しています。

「アポロニア21」2012・11号からのアンケート結果に基づいて当インプラントセンター及び医療法人九州恵会としての見解を示したいと思います。インプラント需要が生じる年齢層である40歳以上の300人を対象にしたアンケート結果から所見を述べます。

「インプラント事故が多いと言う報道についてどのように感じたか」の質問に

  • 「実情はもっとひどいと思う」が36.9%
  • 「やっぱり思った通りだ」が同じく36.9%

、合わせて7割以上の人が強い不信感を持っていることが分かります。

・・・マスコミの影響は強いものだと思います。学会の事故調査にも冠の脱離なども事故としてカウントしてあり、一般に回復できない・著しいダメージを事故とするものと判断が離れて公表されている部分が多数見られます。しかし、社会はすでに「インプラントのトラブルの原因は、歯科医師の知識・技術不足:NHK報道」と認識してしまっています。益々今までのように、しっかりした知見の中で研修、学会参加しての技術・知識の習得の必要だと実感しています。

その原因を複数回答で聞いたところ、

  • 「経験不足の未熟な歯科医師がインプラントの手術をするため」61.7%
  • 「儲けるために、無理に治療を勧める為」50.3%

と2番目に続きます。「インプラントは危険」と言う報道を見たり、聞いたりしたことがある人は、インプラントが適応とされる欠損リスクに差しかかった40代から上の世代で増加しています。報道に接した後、インプラントは危険だと感じたかの設問に対して

  • 「非常に危険だと感じた」19.8%
  • 「やや危険と感じた」69.0%

に登りました。これだけ見ると、インプラントへの不信感が非常に高いことが伺えます。

・・・手術経験値やエビデンス(医学的根拠)に基づいた施術など、術者の研修意欲、研鑽意欲によるものと思います。国外の学会、研修への参加、国内の日本インプラント学会、その他学会への参加、研修が重要だと思ってここ20年以上も毎年続けており、年間150本以上のインプラントの埋入実績とこれまで2000本近くの臨床経験を有しています。

しかし、これらの回答の9割はインプラントの治療経験がない人のものです。回答者の内、インプラント治療の経験を持つ人に満足度を聞いたところ、

  • 「満足している」43.3%
  • 「やや満足している」29.9%

ありました。実際にインプラント手術を受けた人の満足度は高いと言えると思います。

・・・必要な治療手段として患者さんが、選択したインプラント治療ではこの結果と同じように「満足している」「やや満足している」が高い割合で当医院でも8割の人が満足しています。

他医院施術、自院施術ともに経験した事のあるトラブル症例では

  • 「インプラント周囲炎」65.7%
  • 「補綴修復物の破折・破損」64.8%
  • 「埋入手術後のインプラント体の脱落」25.5%

などが上位で、「説明不足」などのコミュニケーションギャップは非常に低位となっています。

・・・ヨーロッパインプラント学会が、最近10年間後のインプラント周囲炎の罹患率を80%とデータを出しました。これは歯牙の歯周病と同じ感覚と思っています。対策としてはメインテナンスの間隔をつめたり、セルフコントロールを指導強化したり、衛生士によるプロフェッショナルコントロールを徹底しています。ほとんどの自院施術の患者さんは、歯周病のメインテナンスの患者さんと同じく毎月コントロールを実施しています。

2007年5月東京都中央区の歯科医院で、インプラント埋入中に動脈損傷事故で患者さんが死亡し、術者とされる院長が業務上過失致死にて書類送検される事件となりました。

・・・これが一番皆さんにはインパクトがあったと思います。しかし、基本的なことを踏まえて入れば完全に防ぐことができ、起こりえない事故と考えています。まず、CT撮影がなされていなかったことが第一だったと聞きます。

世界的にもCT撮影による診断、シミュレーションなしの手術は考えられません。また、ここでコンピューター・シミュレーションなるものに頼ると今のこのソフトはCT撮影のデータを減らして合成しているので信用性がいまいち完全では有りません。「無いよりは、まし」程度に考えないと、これに頼る、あるいはこのシミュレーション・ソフトによる診断を売りにされている医院もありますが同じミスを起こす可能性が高くなります。

またCT撮影だけではまだ不十分で、定期的に海外でガダイバー(献体されたご遺体を使って実習する)実習を行い実際の人体とCT撮影の感覚を身に付けることも必要です。{H24/10/28~11/6までの研修の中、オマハ・クレイトン大学で2度目の実習を行った}
感染対策も重要です。

当医院2箇所とも「エチレンオキサイトガス滅菌」を使って完全に行います。操作の煩雑性、ガスの費用などありますが、分かりやすく言うと大学病院などの中央滅菌室での小型版です。手術室も完備し、生体モニターも歯科では珍しいEtCo2も計測でき、酸素も完備し、手術中酸素吸入により生体への回復力を強めます。全身麻酔も体に負担になりますから、飲む薬を使って手術の恐怖感は完全に取り、でも意識的には受け答えができる状態を保って手術できるようにしています。

以上のように、インプラントの技術、知識はエビデンスにのっとり日々進化しています。海外では一つのインプラントシステムに年間500編近くの論文が出ています。すべてを読みきるのは難しいですが、トピック的な内容は必ず目を通すようにしています。因みにまったく論文に載らない日本のインプラントメーカーの製品から、年に50編もないような論文数しかない海外メーカーなど多種多様の製品もあり、価格もあります。歯科医師としての研鑽と、メーカーの信用性にも重きを置き、今のインプラントに厳しい世情に基礎的な技術、知識を用いてあらゆる症例に応用的技術と知見を費やせるように今後も患者さんのために研鑽していきます。

平成24年12月

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